海外大会参戦レポート (33rd annual North American Open)

 


 33rd annual North American Openは2023年12月26日~30日にHorseshoe Las Vegasで開催されました。私は時差ボケ(日本から北米に行く場合、朝は早く起き夜も早く眠くなります)と、いろいろなタイムコントロールを体験してみたいことを理由に3日コースを選びました。十年ほど前にこの大会の話を聞き自分もいつかこの大会に出たいと思ってました。日本からは他に奥野澟音君と松永冬馬君も参加してます。二人とも将来FIDE2000超えそうな有望なジュニアです。

*持ち時間
試合はOpen Section以外は12/26からの4日コース、または12/27からの3日コースを選べます。Open Sectionは12/26からの5日間で持ち時間40手90分+30分+30秒Delay/手、スイス9Rです。 4日コースは12/26の夜から12/29まで持ち時間40手90分+30分+30秒Delay/手、スイス7R 、そして3日コースは12/27から最初の2試合の持ち時間が60分10秒Delay/手で3ラウンドから4日コースと合流します。

*セクション

Open Section、U2300とU2100はFIDE戦です。それ以外のセクションはU1900、U1700、U1500、U1300、U1000でした。私はアメリカのレーティングが1920だった為、U2100に参加することになりました。海外からのプレーヤーは追加料金を支払わずにOpen Sectionに参加するのが可能ですが、自分はグランドマスターたちと試合をする心の準備が出来ておらずレーティング範囲内のセクションにしました。

*会場


 
今大会はOpen Sectionに125名、U2300に161名、U2100に157名、U1900に179名、U1700に150名、U1500に121名、U1300に104名、U1000に126名の合計1123人のチェスプレーヤーがこの大ホールで試合をしました。ボード番号だと600まで用意されてます。

チェスセットは用意されておらず、持参の物を使います。自分は中野チェスクラブでも愛用しているChessJapan(チェスジャパン)のセットとDelay対応可能なチェスクロックを持っていきましたが、一度も試合では使わなかったです。(ホテルの部屋で振り返りした時に使いました)。



ボード1-10はオーガナイザーが用意したDGTボードを使い、隔離されたスペースで試合ができますがボード11以降になると大広間で試合することになります。

印象的だったのはOpen Sectionで国内レーティング2600超えのグランドマスターがDGTボードから外れて「その他大勢」の席で試合していたところでした。まさにアメリカは実力主義の国ですね。

*結果
まず自分が、ちょうどリストの半分以下でした(1Rはリストトップの2098と当たりました)。最終的に3.0/7で負け越し、初戦から3連敗することは予想してませんでした。自分が体調不良や寝不足ではなく相手が強かったからです。セクションを細かく分けることにより、実力が近い相手との試合が期待できるので黒星が多くても楽しめました。持ち時間も40手90分+30分と長めでしたので実力を出し切ることができました。

「楽しかった負け試合」の1つを紹介いたします。

[Event "North American Open 2023 U2100"]
[Date "2023.12.27"]
[White "Seiji Nakagawa"]
[Black "Aishwarya Lakshmi Ganapathy"]
[Result "0-1"]
[WhiteElo "1920"]
[BlackElo "1800"]

1. e4 e5 2. Bc4 Nf6 3. d3 Bc5 4. Nc3 h6 5. f4 d6 6. Nf3 Nc6 7. f5 Ng4 8. Qe2 Bf2+ 9. Kd1 Bb6 10. Rf1 Nf6 11. a3 Nd4 12. Nxd4 Bxd4 13. g4 c6 14. h4 d5 15. exd5 cxd5 16. Bb3 Bxc3 17. bxc3 Qd6 18. a4 e4 19. Bf4 Qc6 20. g5 Qxc3 21. Rb1 Nd7 22. Bd6 Qc6 23. Bb4 Nc5 24. dxe4 Nxe4 25. Rf3 hxg5 26. Rd3 Be6 27. fxe6 fxe6 28. hxg5 Rh1+ 29. Be1 O-O-O

まで進んだ局面です。


白は駒得してますがキングが不安定です。黒から30…Nc3+を狙われているので対応しないといけないですが難しいところです。持ち時間はほぼ使い切り、残り2分でしたが(30分を追加される)40手まであと10手かかります。

本譜ではe1-ビショップを守りつつ、a7を狙うために30.Qe3と指しましたが、これが致命的なブランダーでした。以下、

30… d4から 31. Bxe6+ Qxe6 32. Rxd4 Qg4+ 33. Kc1 Rxd4 0-1 と逆転されました。悔しいかと言われれば悔しいですが、試合中はアドバンテージを維持できる30.Qf3(e1の守りが薄くなる手)や30.Kc1(キングをわざわざピンされる位置に移動する手)は見えてませんでした。

今大会はこのような難しい選択をしないといけない試合が多く、とてもハードでした。


*空港

自分は23日にLAへ飛び、クリスマスイブはLA在住の友人と過ごし、25日にラスベガスへ移動しました。
LAX(空港)に到着したときの入国手続きで大会の参加者リストに自分の名前が載っているか確認された時は驚きましたが、問題なく入国出来ました。


*食事
試合開始時間が11時と6時だったので試合直前に食事を取ってました(何でもアメリカンサイズだったので日本人の胃袋には多すぎました)。
朝食(ほぼブランチ)は一人で、夕食は大会に一緒に参加しているアメリカ人の友人たちと取りました。


左からSam Lee (unrated、U1900)とAlex Kaelin(USCF 1885、U2100)はワシントン州から参加してました。


*ホテル
ホテルは試合会場のHorseshoeにしました。一昨年までBally’sという名称でしたね。2か月前から予約を入れたのでリーズナブルな価格で泊まれました。ラスベガスのホテルはCasinoで儲けているので宿泊は比較的安めです。




*終わりに・・・

負けた試合からもチェスの楽しさを改めて感じることができた大会でした。カナダ生活が長かった私にとって久々の海外での大きな大会は新鮮で刺激的でした。私の中野チェスクラブでもこの経験を活かして皆さんが楽しめるような大会運営を目指したいと思います。宜しくお願いします。

中川

(中野チェスクラブ)

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